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日本料理の次世代への継承と、更なる発展。日本料理を未来に繋ぐ。

レターポットはブラック企業問題を解決する救世主になるのでは無いだろうか。

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レターポットを知っていますか?

どうも、あとむら(@gastronomy_work)です。
さて皆様、昨年末にリリースされた新しいサービスである「レターポット」というサービスをご存知でしょうか?
吉本興業の芸人のキングコング西野亮廣さんが構想され、開発に至った新しいwebサービスになります。
簡単に説明すれば、有料で文字を買って、相手に買った分の文字数や、他の人から貰った文字数の分だけ手紙の贈り物が出来るというものです。
「スマホやSNSの普及した現代では、イケてる人は多くの"文字"を他人から受け取っているのでは無いか。それが可視化できたら面白いんじゃないか」という西野さんの仮説がサービスの根幹の思想になっています。

上手く説明できませんが、詳しい説明は他の皆様がされていますので、そちらを参照してくださいませ。

レターポットが見せた可能性とお金の正体
こちらのサイトは図解もあって非常にわかりやすいです。

日本社会を蝕む「ブラック企業」問題

このレターポットは飲食業界の未来、もっと言ってしまえば、社会問題化しているブラック企業問題を解決する可能性があるサービスでないかと思います。

単なるインターネットスラングだった「ブラック企業」という言葉が、今や社会問題化してテレビのニュースや新聞の紙面にも見られるようになりました。
ブラック企業という言葉の定義は詳しくは知りませんが、だいたい「低賃金で長時間労働で従業員を働かせる会社」という意味で使われているように思います。

すっかり社会に定着してしまった「ブラック企業」という単語が、まだネット上だけで使われ始めた当初の頃(だいたい10年以上前)は、僕は就職のことをボンヤリと考える学生でした。その頃の「ブラック企業」という言葉の意味は現在の使われ方とは少しニュアンスが違って「従業員にスキルの身に付かない仕事をさせる会社」という意味だったように思います。

例えば、「工場で一日中スーパーで売ってるような刺身にタンポポを乗せる」という仕事を考えてみましょう。仮に、この仕事が「週休5日、1日の労働時間は8時間で年収1000万円」という条件の会社があったとします。
現在の「ブラック企業」という言葉の意味であったら、週休5日もあって年収1000万円だったら該当しないと思いますし、実際に求人があれば転職を考える人もいるのでは無いかと思います。

しかし、ブラック企業という言葉が誕生した当初の意味であったら「刺身にタンポポを乗せるだけの仕事」というのはスキルはほとんど身に付かず、超ブラック企業に該当します。真っ先にロボットに代替される仕事でしょう。

料理の世界は「ブラック企業」だらけ?

私は日本料理の料理人という仕事をしています。
今でこそ給料は少し上がりましたが、入社したての頃は結構大変でした。
朝は6時頃に出社で休憩はほとんど無くて、終業は深夜の0時。1日の店舗での労働時間はだいたい18時間、そこから時間外労働として、帰宅途中にバイクで山に登って次の日のお客様の料理の盛り付けに使う葉っぱを取りに行き、帰宅してから葉っぱのキレイな部分と汚い部分の選別。そこから風呂に入って就寝。平均の睡眠時間は3時間を少し切るぐらいでした。そして給料は手取りで10万円でした。
(家賃、水道光熱費0円で社宅に住ませて貰えたり、食事は昼と夜は賄いが食べさせてもらえたので、実質的な可処分所得を考えたら完全に低賃金とは言えないかもしれませんが。)

現在の基準で言えば完全に「ブラック」と言われるでしょう。平均睡眠時間が3時間という時点でアウトだと思います。

しかし、実際に働いていた僕や僕の同期、同じ環境で働いていた先輩や後輩も、そこに残った人たちは「ブラック」という認識は少なかったです。その理由はスキルや知識が身につくからです。

ホリエモンさんの「修行不要論」とかが話題になり、現在の若手の料理人さんの感覚は少し変化していることかと思いますが、現在でも同じように考える人は少なからずいると思います。

しかし、「ブラック企業」という言葉が当初の形から意味を変え、社会問題化している現在では、僕の1年目のような状況では日本料理の業界は大半が「ブラック」のレッテルを貼られます。

インターネットとスマートフォンの爆発的な普及によって、昔の私が価値のあるものだと思っていた「知識」の部分の株は大暴落しています。googleで検索したり、Wikipediaを調べれば知識の部分はほとんどコスト0で知ることが出来るようになりました。

結果、わざわざシンドイ思いをして、料理の道を目指す若者は減り、業界の未来は衰退する一方では無いかと思います。

そこに現れたのがレターポットです。
これは飲食業界を救う救世主になる可能性を秘めたサービスで無いかと思っています。

なぜ飲食業界は低賃金長時間労働なのか

まずレターポットの前に、そもそも飲食業界はなぜ長時間労働で低賃金なのかという説明からさせていただきます。
一言で言えば、「飲食業界は典型的な労働集約産業だから」なんですが、それだけでは何のことか難しいので補足させていただきます。

労働集約型産業とは、事業活動の主要な部分を労働力に頼っていて、売上高に対する人件費の比率が高くなる産業の事を意味しています。売上を増やそうとするとその分労働者が必要になる産業です。

(中略)

職人の技が必要で機械化ができない製造業は労働集約型産業ということになります。

飲食店や宿泊業、トラックやタクシーの運転手、大規模化や機械化が進んでいない形態での農業、建設業なども労働集約的な側面があります。
労働集約型と資本集約型の違いと知識集約型より引用。

まず大前提として、飲食業界に限らず全ての会社に言えることですが、賃金というのは会社の売上からしか捻出することが出来ません。
飲食店の売上というのは、「客単価×席数×回転率」という公式で表せます。
この公式は理解してもらわなくて全然大丈夫です。理解してもらいたいのは、飲食店には物理的に売上の上限に制約があるということです。
売上の上限に制約があるということは、働いている従業員に支払える給与にも上限があるということです。

(これは飲食業界に限らず、一般的に高給と言われる医師や弁護士のような仕事であっても、1人の人間に担当できる仕事の量に物理的な限界がある以上、高給で働いているかもしれませんが収入には限界があります。多くの仕事でも似たような構造の会社や業界が多いと思います。)

さらに、その中でも飲食業界、特に職人の世界というのは典型的な労働集約型であるため、会社が売上を上げるためには労働時間の長時間化が避けられなくなっているのです。

ブラック企業問題というのは会社の売上が昔ほど伸びないという問題が大前提としてあります。

「ブラック企業」経営者への批判と言い分

簡単に給料は上げられない

「経営者は従業員にもっと給料を払え」というのはよく言われる批判ですが、そう簡単にはいかない理由もあります。
日本の法律や商慣習として、一度雇った人は簡単に解雇出来なかったり、一度上げた給与は簡単に下げられなかったりします。何らかの原因で店舗の売上が下がってしまったときに「お客さんが減って仕事が少なくなったから辞めてくれ」とか「売上が下がったから給料も下げるよ」とは言えないのです。

さらに、事業主が銀行からお金を借りるときも、書類上は株式会社の形態になっていたとしても、上場していないほとんどの株式会社では事業主が個人で連帯保証を求められることが慣例になっています。
これでは株式会社である意味は税制や事業承継の際の相続の優遇ぐらいしか無く、実質的には個人事業主と変わりありません。

(株式会社というのは、万が一事業に失敗しても損害は出資した範囲にとどめるという有限責任が原則になっていますが、上場していない一般の株式会社では、この原則はほとんど当てはまりません。実質的には無限責任になっています。)

まあ、つまり、経営者の側の言い分を身も蓋も無い言い方をすれば「会社が潰れたら従業員の君らは他の会社に転職すればいいだけだけど、俺は借金まみれで何もかも失うし、オマケに雇用保険なんて無いんだから、リスクを背負ってる分、儲かってるときはちょっとぐらい高い給料をもらっても当然やんけ」ということになります。

この構図を是正しようという動きが、安倍政権の「働き方改革」の骨子である「同一労働同一賃金」や「解雇規制の撤廃」になりますが、政治的な話はここでは論旨にズレるので割愛します。

「お客さんはお金がないのでは無く、お金を使う理由が無い」

「席数は物理的に拡張不可能なのはわかるけど、客単価はお店が自由に決められるんだから値上げすればいいやん。」というのも良くある批判です。
新しくオープンする店なら良いのですが、既存の店舗の値上げは非常に難しい。

これもキングコング西野さんの革命のファンファーレ 現代のお金と広告という本からの引用なのですが、「お客さんはお金がないのでは無く、お金を使う理由が無い」のです。一方的な経営者の供給側の都合(例えば、「原材料の価格の上昇」とか「従業員の給料を上げるから」という理由)では誰も納得しません。お客さんの需要側の都合をしっかりと考えた上でキチンとした価値を提供した上で値上げして、その結果として従業員の給料を上げるという順序でないと反発は必至でしょう。
上手く実行出来る経営者は実行して、従業員の給料を増やしてもらえればいいと思います。
しかし、実際には口で言うほど簡単ではありません。

革命のファンファーレ 現代のお金と広告

革命のファンファーレ 現代のお金と広告

レターポットはサービス業との相性が抜群

随分と前置きが長くなりましたが、ここで新サービスのレターポットに戻ります。
レターポットのシステムはサービス業(もちろん飲食業界を含む)との相性が抜群です。

レターポットは有料で文字を贈るサービスですので、わざわざお金を払ってまでネガテイブなメッセージを送る人は非常に少ないと思われます。

これに関しては、こちらの方のサイトの解説が非常にわかりやすいです。

参考サイト

つまり、「多くのレターを持っている人=ポジティブなメッセージを多く貰っている人=信用できる人」という構図が出来上がります。

レターポットは信用を可視化する装置である

大将が1人でやっているような小さな店舗を除けば、日本料理店の調理場というのは細かく仕事が細分化されているのが一般的です。
例えば、焼物の担当の人なら焼物。造りの担当の人なら造りという具合です。

お店に食べに行っても、他の料理は普通やけど、焼物は特に美味しいとか、お造りが美味しいとかいうことはよくあることだと思います。
そういうときの、お客さんの「美味しい」という声は実際に焼物の担当の人やお造りの担当の人までは届かないことが多いです。
お客さんの賞賛の声は店の「大将」とか「料理長」という立場の人に集中します。
それはお客さんの側からすれば当然で、食事に行った店で今日の「焼物の担当はスタッフの○○君」とかいう個人名にまで辿り着くことが出来ないからです。
大きな店だと仕事はかなり細分化して、同じように見える「味付けの担当の人」でも「お椀の味付けをした人」と「煮炊き物の味付けをした人」と「自家製ポン酢の味付けをした人」が全員違ったりします。そんな個々の事情は把握しきれっこないので、どうしても代表して、現場の全体の指揮をとる人に賞賛の声が集まるのは当然でしょう。
優しい大将や料理長なら「お客さん、今日の焼物、美味しいと言ってたよ」ということを直接言ってくれる人もいるのですが、そういう声は本人まで届かないことも多いです。

そういうときはレターポットを贈ってください。
お客さんはお店の「公式レターポット」にレターを贈る。
お店は従業員全員にレターポットを登録してもらう。(登録だけなら無料ですので、従業員の方の抵抗も少ないと思います。)
そしてお客さんから贈られたレターを、その日の焼物やお造りの担当の個人に転送する。
これで多くのレターを貰っている人=美味しい料理を作る人という構図が出来上がります。
そして貰ったレターは数字で可視化されるので、「美味しい」という曖昧な言葉(それだけでもかなり嬉しいのですが。)よりも、実感や自信にも繋がります。

お金持ちならぬ、レター持ちの人を通常より早く出世させてもいいし、給料を上げるという形でもいいし、もしくは「社内マイル」みたいな形で還元してもいいでしょう。

レターポットは飲食業界のブラック化を救う!

レターポットが日本全体に普及すれば、料理人さんが独立したときに「有名料亭の料理長」よりも、「同じ料亭の料理長でもなんでもないけど、1年で100万レターを集めた人」のほうが評価が高いという事が起こるかもしれません。

レターポットが普及した未来は飲食業界のブラック化という社会問題を政治的な解決よりも早く解決させる救世主になり得るのでは無いかと思います。

社会問題化しているブラック企業問題ですが、人によって「ブラック企業」と感じるかどうかというのは大きく個人差があります。
同じ環境で仕事をしている人でも鬱になる人と全く平気な人がいます。
これを政治的にどこかで線を引いて、「残業時間を○○時間以下にしょう」とか言っても解決するのは不可能です。政府主導で実施した「プレミアムフライデー」なんて1年も経たずに死語になりつつあります。
問題は労働時間や賃金よりも、ストレスの緩和でないでしょうか。

人が「どんなことでストレスが緩和されるか」というのも個人差のある問題かもしれません。
しかし、多くの人にとって、「自分の仕事で誰かが喜んでいる。誰かの役に立っている」という実感を得ることは仕事をしていてやりがいを感じる瞬間でないでしょうか。
その「誰かの役に立っている」というのを可視化したサービスがレターポットなのです。

レターポットには基本的にポジティブなメッセージしか集まりません。
(芸能界一好感度が低いと言われるキングコング西野さんですら、ネガテイブなメッセージは全く届かないそうです。笑)

少なくとも日本料理の業界ではレターポットは働き方を考える上で、革命的なサービスになるのでは無いかと確信しています。
我々、料理人は仕事が大変でも、給料が安くても、お客様の「美味しい」という「言葉」と、日本の文化を背負ってるという少しの自負だけで頑張れる人種なのですから。


感想などレターポットで送って頂ければ嬉しいです。