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「煮物椀」について その4【様々な種類の吸い地と煮物椀のポイント】

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煮物椀について考える記事の4回目になります。
今回でお椀に関しては最終回です。
前回までの記事をご覧になってない方はそちらまどうぞ。


色々な種類の吸い地

お椀に使われる吸い地は「澄まし仕立て」が多いですが、それだけではありません。
色々な種類の吸い地を紹介したいと思います。

澄まし仕立て

一番出汁を使います。
これに塩と醤油で、場合によってはお酒を入れて味付けします。
多くの場合、お椀と言えばコレです。

潮(うしお)仕立て

潮は「汐」とも表記します。
潮仕立てとは、魚貝から取った出汁で作る椀物のことです。
鰹節は使わずに昆布だけで魚貝を煮て出汁を取ります。鰹節を使うと魚貝の味が2種類になって、持ち味を殺しあってしまいます。
3月の雛祭りの時期の蛤(ハマグリ)や、鯛がよく見られます。

霙(みぞれ)仕立て

大根や蕪をすりおろしたものを加えたもの。主に冬場に使われます。
大根や蕪の白い色を霙に見立てました。
お椀だけでなく、焚き合わせなどにも使われます。
放っておくと大根が沈殿するので、次項の薄葛仕立てと併用されることが多いです。

薄葛仕立て・吉野仕立て

こちらも主に冬場に使われます。
出汁に少量の葛を溶き、若干とろみをつけたもの。
吉野は葛の産地なので、吉野仕立てとも言われます。
保温性が増します。また、お腹にしっかりと貯まります。
澄まし仕立ての持ち味を大きく損なわずに変化をつけれます。

すり流し

すり潰した材料(主に野菜)を出汁で伸ばしたもの。こちらも素材が沈殿するので、薄く葛を溶きます。ドロっとするぐらいまで溶いてしまうと台無しになってしまうので要注意です。

酒粕仕立て

酒粕を解いたもの。
白味噌を加えると上品な味わいになり、高級感が出ます。

味噌仕立て

京都風の雑煮は白味噌仕立てですね。
味噌をバーナーで焦がしてから解く、焼き味噌仕立てなんかもあります。
一番出汁よりも、二番出汁を使う方がコクがあって良い場合もあります。

煮物椀を作るときのポイント

煮物椀を作るときに僕がポイントと思うことを何点が挙げたいと思います。

少し薄味で作る

吸い地の味付けをするとき、味見をするときは一口か二口ぐらいしか飲まないと思います。
このときに丁度いい濃さの味付けにしてしまうと、お椀で一杯飲んだ時に辛く感じてしまいます。
味見をするときは、「少し薄いかな?」と思うぐらいで止めておくと、一皿食べたときに丁度いい加減になります。
私が実際に食べた日本料理のお店の中でも、一口目が一番美味しいけど、一皿食べたときにかなり濃いというお店は結構あります。
一口目は薄めに、というのがポイントです。

夏は塩、冬は醤油で

どうしても夏は汗をかいて、身体の中の塩分が少なくなります。
人間の身体は自分に足りない栄養素を摂ると美味しいと感じる様に出来ています。
石器時代なんかは動物性の油脂は生命を維持するのに必要な栄養素でありながら、貴重品で中々食べられないものでした。人間の生活様式が変わった現代でも、当時の人類と遺伝子の配列はほとんど変わりません。
だから甘い物や肉類を食べると、積極的に摂取するように美味しいと感じるようになっているのです。
同じように塩分も生命を維持するのに必要なものです。吸い地の味付けは塩と醤油を使いますが、夏場は塩を多目にして、醤油は減らす。冬は逆に塩は少な目で、醤油を増やすと良いです。

盛り付けは冷めないように

基本中の基本中で、日本料理のお店で働いたことのある人は誰でも言われた事があるのではないでしょうか。
人間の舌は、食べる物の温度によって味の感じ方が変わります。
例えば、アイスクリームを想像してもらえば理解しやすいと思います。
冷凍庫から出したばかりのアイスクリームは美味しい。ちょうどいい加減の味だと思います。
これが何時間か放置されて、溶けて常温になったアイスクリームを食べたことがある人はいるでしょうか?
真夏の屋外で食べるソフトクリームの最後のほうとかでもいいです。
おそらくメチャクチャ甘いと感じるでしょう。
別にアイスの味付けが変化した訳ではなく、我々の味の感じ方が違うのです。
人間は口の中と同じ温度の味は感じやすく、そこから温度が高くなったり低くなったりすると感じにくくなります。
吸い地の味を見たときはベストの味付けであっても、お客様のところに行くまでに、ぬるくなってしまえば味の感じ方も変わってしまいます。
椀種あしらいはしっかりと温めないと、吸い地を張ったときに熱を奪います。
盛り付けは手早く、冷めないうちにお客様のところに届けていかなければなりません。

まとめ

今回は吸い地の種類と煮物椀を作る際のポイントをまとめてみました。
煮物椀は日本料理の華であり、料理人の技量が現れます。
しっかりとした技術と知識を身につけ、いい料理を作れるようになって欲しいと思います。
私自身もまだまだ勉強していかなければと思います。

御椀と煮物―多彩に活かせる最新の仕立て・伝統の技

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